2026.01.26
【菜家だより】ゴボウ鍋ができるまで
・・・・・厨房の奥の、ひと手間の話
寒さが少しずつ深まってくると、
梅乃屋では、「ゴボウ鍋」が始まります。
お客様の中には、
「この鍋、どうしてこんなに香りがいいの?」
「ごぼうなのに、えぐみが全然ないですね」と、

召し上がりながら不思議そうに
聞いてくださる方も少なくありません。
今日はそんな声をきっかけに、
**美東ごぼうを使ったゴボウ鍋の“裏側”**を、
少しだけお話ししてみようと思います。
美東ごぼうとの出会い
梅乃屋で使っているごぼうは、
山口県美祢市美東町で育った
「美東ごぼう」

昼夜の寒暖差があり、
ミネラルたっぷりの赤土で育つため、
香りがよく、
繊維がきめ細かいのが特徴です。
ごぼうは扱い方ひとつで、
味が大きく変わる野菜。
だからこそ、下ごしらえが
何より大切になります。
厨房の奥で、黙々と
ゴボウ鍋の仕込みで、
いちばん時間と手間がかかるのが、
ごぼうを“擦る”工程です。
皮を軽くこそげ、
泥を丁寧に落とした美東ごぼうを、
一本一本、すりおろしていきます。
厨房の奥で、
ゴリゴリ、ゴリゴリ……
音だけが静かに響く時間。
正直に言うと、
楽な作業ではありません。
それでも手間をかける理由は、
ごぼうの香りと甘みを
一番きれいに引き出せるから。
丁寧に擦ることによって
ごぼうの繊維の出方や、
口当たりが微妙に変わるからなのです。
「えぐみ」が出ない秘密
よく聞かれるのが、
「どうしてアクが出ないんですか?」
という質問。
実は、擦りたてのごぼうは、
空気に触れる時間が短いほど、
えぐみが出にくいのです。

だから、擦ったらすぐに出汁と合わせる。
このタイミングを逃しません。
美東ごぼう自体の質の良さもありますが、
“間を置かない”ことが、
ゴボウ鍋の味を決める大切なポイントです。
ゴボウ鍋を召し上がられるとき、
まずは一口、出汁だけで味わってみてください。

すりたての美東ごぼうの香りが、
ふわりと立ち上がり、
口の中でやさしく広がります。
調味料に頼らず、
ごぼうそのものの甘みと
旨みを感じていただける、
梅乃屋自慢の出汁汁です。
鍋の向こうにあるもの
ゴボウ鍋を囲むと、
自然と会話がゆっくりになります。
体が温まり、気持ちもほどけていく。
そんな時間を過ごしていただけたら、
それで十分。

厨房でごぼうを擦っているとき、
「この一杯が、
今日の旅の思い出になりますように」
そんなことを思いながら、
黙々と手を動かしています。
ゴボウ鍋を召し上がるとき、
ほんの少しだけ、
厨房の奥の音や香りを
思い出していただけたら嬉しいです。
それもまた、
梅乃屋の味の一部なのかもしれません。
