2025.11.15
【菜家だより】秋吉台の恵みが育てた「美東ごぼう」
湯田温泉の宿「梅乃屋」で
お客様にお出ししている地元野菜の中でも、
私が特におすすめしたいのが
「美東ごぼう(みとうごぼう)」です。

しっかりとした香りと、噛むほどに感じる甘み。
煮ても崩れにくく、口の中に広がる風味は
まさに“ごぼうの王様”。
一度食べた方は「こんなに柔らかくて
香りがあるごぼう、初めて」と驚かれます。
その秘密は、
山口県美祢市美東町に広がる
秋吉台の大地にあります。

ごぼうの味を決めるのは、実は“土”なのです。
秋吉台の赤土が生む、力強い味わい
「美東ごぼう」は、カルスト台地・秋吉台のふもとで育ちます。
秋吉台といえば、日本最大級の石灰岩台地

長い年月をかけて石灰岩が風化し、
ミネラル分をたっぷり含んだ
粘土質の赤土が生まれました。
この赤土こそが、
美東ごぼうを唯一無二の存在にしています。
村上農園との出会い
この美東ごぼうを育てているのが、「村上農園」の村上さんです。

秋吉台のふもとに広がる畑で、
ごぼうづくりに情熱を注いでおられます。
村上農園の「美東ごぼう」は、
見た目のインパクトにも思わず驚かされます。
ずっしりと太く、力強いその姿は、
まさに秋吉台の大地が育てた証。
「数よりも味で勝負したい。
うちは“美東の味”をそのまま届けたいんです」

と語る村上さんの言葉に、私は胸を打たれました。
風と水、そして人が支えるごぼうづくり
秋吉台の周辺は、昼夜の寒暖差が大きく、
風がよく通る土地。
その自然のサイクルがごぼうの成長を助け、
引き締まった身をつくります。
さらに、地下に広がる鍾乳洞の水脈から
湧き出る清らかな水も欠かせません。

カルシウムやマグネシウムなどの
天然ミネラルを含む湧水が、
ごぼうに滋味を与えています。
自然の恵みを受けながらも、
それを引き出すのは人の手
美東ごぼうの味わいの背景には、
自然と人の共働があるのです。
「美東ごぼう」を味わう、梅乃屋自慢のごぼう鍋
梅乃屋では、地元・村上農園の
「美東ごぼう」をふんだんに使った
特製ごぼう鍋をお出ししています。

実はこの鍋、ただの「具材」として
ごぼうを入れるのではありません。
ごぼうを丁寧に焼いて香ばしさを引き出し、
擦ってペースト状にしたものを、
かつお出汁と合わせて鍋のだし汁にしているのです。

このひと手間が、美東ごぼうならではの
深い香りとコクを最大限に引き出してくれます。
ごぼうの自然な甘みと、
秋吉台の土が生んだミネラルの旨みが、
出汁の中に溶け込み、
まろやかで奥行きのある味わいに。
その中に、地元の新鮮な野菜と、
山口県産の牛肉を加えると──
香り、甘み、旨みが三位一体となり、
体の芯まで温まる滋味豊かな鍋に仕上がります。

ごぼうは食物繊維が豊富で、
腸を整え、血流を良くする働きがあります。
美容や健康にも良いとされ、
最近では毎日の食卓に取り入れる方も増えています。
でも、美東ごぼうは栄養だけでなく、
“生きた土地の力”を味わえる野菜です。
噛むたびに香り、
身体にしみわたるような甘み。
まるで、秋吉台の大地を
そのまま食べているかのような感覚です。
私自身も、この鍋を味見するたびに感じるのです。
“ああ、山口の大地の力ってすごいな”と。

「村上農園」のごぼうが持つ力強い香り、
秋吉台の赤土が生んだミネラル、
そして地元の水と野菜が織りなす調和──。
それらが一つの鍋の中で溶け合い、
心も体もほぐしてくれる。
まさに「山口の恵みを食べる」ひと鍋です。
これから寒くなる季節、湯田温泉にお越しの際は、
ぜひ梅乃屋の美東ごぼう鍋を味わってみてください。

湯気の向こうに、秋吉台の風と土の香りを
感じていただけるはずです。